拍子と拍節
約 14 分
この節のねらい
拍子記号は「1小節に何がいくつ入るか」を示すだけの記号ではなく、どこに強さを感じるかを決める記号です。単純拍子と複合拍子の違い、強拍と弱拍、シンコペーションまでを、同じ音形を違う拍子で鳴らして体感します。
- 拍子記号の上下の数字がそれぞれ何を意味するか説明できる
- 単純拍子と複合拍子を区別し、6/8 が「2拍を3分割した拍子」であると説明できる
- 強拍・弱拍の位置を拍子から言い当てられる
- シンコペーションが「強拍の位置をずらすこと」だと説明できる
前の節で1つの音の長さを扱いました。次は、その長さが周期的にまとまる仕組みです。
音楽を聴いていると、自然に足でリズムを取れます。その等間隔の刻みが拍(beat)です。そして拍は、ただ均等に並んでいるのではなく、いくつかごとに「重い/軽い」の周期を持ちます。その周期が拍子(meter)です。
拍子記号の読み方
五線の左端、音部記号と調号の後ろに2つの数字が縦に並びます。これが拍子記号です。
- 上の数字 = 1小節にいくつ入るか
- 下の数字 = 1拍にあたる音符の種類(4 = 4分音符、8 = 8分音符、2 = 2分音符)
分数のように見えますが、数学の分数とは意味が違います。下は「分母」ではなく音符の種類を指す番号です。「4分の4拍子」という日本語の読み方は分数由来ですが、意味は「4分音符が4つ」です。
なお 4/4 は C という記号でも書かれます(common time)。これは「C = common の頭文字」ではなく、中世の記譜で完全な循環を表した円が半分になったものが由来です。縦線を入れた ¢ は 2/2(cut time)を意味します。
確認
拍子記号が 3/8 のとき、1小節に入るのは何がいくつですか?
強拍と弱拍 — 拍子の本質
拍子記号が本当に伝えているのは、音符の個数ではありません。どこに重さを感じるかです。
- 2拍子: 強・弱
- 3拍子: 強・弱・弱
- 4拍子: 強・弱・中強・弱
小節の1拍目は必ず最強の拍(強拍)です。4拍子だけは3拍目に第2の強さがあり、これが4拍子を「2拍子が2つ」と区別する特徴になります。
この階層があるおかげで、聴き手は小節線が見えなくても「いま何拍目か」を感じられます。逆に言うと、強さの周期がなければ拍子は成立しません。同じ音符の並びでも、どこを強拍と感じるかで別の音楽になります。
同じ音の列を、違う拍子で感じる
確認: 鳴っている音の長さも高さも同じ6つの音です。違うのはアクセント(強く弾く位置)だけ。1つめは3つごと(3拍子)、2つめは2つごと(2拍子)に重さが来ます。同じ音列が別のリズムに聞こえることを確かめてください。
強・弱・弱 / 強・弱・弱
単純拍子と複合拍子
拍子は「1拍をどう割るか」で2つの系統に分かれます。ここが拍子の理解でいちばん大事な分岐点です。
単純拍子は、1拍が2等分される拍子です。2/4、3/4、4/4 が代表で、1拍(4分音符)が8分音符2つに割れます。
複合拍子は、1拍が3等分される拍子です。6/8、9/8、12/8 が代表です。6/8 は8分音符が6個ですが、実際には3個ずつまとまって2拍として感じられます。つまり1拍は付点4分音符です。
| 拍子記号 | 感じる拍数 | 1拍の音符 | 系統 |
|---|---|---|---|
| 2/4 | 2 | 4分音符 | 単純2拍子 |
| 3/4 | 3 | 4分音符 | 単純3拍子 |
| 4/4 | 4 | 4分音符 | 単純4拍子 |
| 6/8 | 2 | 付点4分音符 | 複合2拍子 |
| 9/8 | 3 | 付点4分音符 | 複合3拍子 |
| 12/8 | 4 | 付点4分音符 | 複合4拍子 |
複合拍子で「上の数字」と「感じる拍数」がずれるのは、記譜の都合です。付点4分音符を分母に書く方法が記譜法に存在しないため、3分割した後の8分音符で数えるしかありません。だから 6/8 は「8分音符6個ぶん」と書きながら「2拍」として読む、という二重構造になります。
3/4 と 6/8 は同じ長さで別の拍子
この2つは1小節の長さがまったく同じ(8分音符6個分)ですが、拍の割り方が逆です。
- 3/4 = 2分割の拍が3つ(♩♩♩、各拍が ♪♪ に割れる)
- 6/8 = 3分割の拍が2つ(♩. ♩.、各拍が ♪♪♪ に割れる)
6 を 3×2 と見るか 2×3 と見るかの違いです。楽譜上は同じ音符が並んでいても、強さを感じる位置が変わるので、まったく違うリズムになります。
3/4 と 6/8 を聴き分ける
確認: どちらも8分音符6個で長さは同じです。1つめは2音ずつペアになって3グループ(3拍子)、2つめは3音ずつまとまって2グループ(6/8)に聞こえます。同じ6音がグループ分けだけで別物になることを確かめてください。
|強 弱|強 弱|強 弱| = 3つのペア
確認
9/8 拍子は、ふつう何拍の拍子として感じられますか?
アウフタクトとシンコペーション
拍子という前提ができると、それをずらすことが表現になります。代表的なものが2つあります。
アウフタクト(弱起)は、曲が強拍からではなく小節の途中から始まることです。最初の小節が拍子記号どおりの長さに足りない形で書かれます。歌のメロディーが「さん、はい」の後の弱い拍から入るのはこれです。
シンコペーションは、強拍にあるはずのアクセントを意図的にずらす技法です。作り方は主に2つあります。
- 強拍を休符にして、その直前の弱拍に音を置く
- 弱拍から強拍へタイでつなぎ、強拍で新しい音が始まらないようにする
どちらも「本来ここが強いはず」という聴き手の期待が前提です。だから拍子が明確に成立している音楽でこそシンコペーションは効きます。拍子が曖昧な音楽ではずらしても何も起きません。
シンコペーションを作る
確認: 1つめは強拍にきちんと音が来る形。2つめは強拍を避けて弱拍に音を置いた形です。2つめのほうが前へ突っ込むような推進力を持つことを確かめてください。同じテンポ・同じ音数です。
強拍に音が乗る
小節線は「拍子の区切り」であって休憩ではない
最後に、初学で誤解しやすい点を1つ。小節線には長さがありません。小節線は「ここが強拍の直前」を示す区切り記号で、そこで音を切ったり間を空けたりする指示ではありません。
フレーズ(音楽的なまとまり)は小節線をまたいで続くことが普通です。小節は数えるための枠、フレーズは音楽的なまとまりで、この2つは一致しません。この区別は、後のユニットで扱う「楽節と形式」の出発点になります。
メトロノームで拍子を切り替えて体感する 拍子(1小節の拍数)を変えると、アクセントの位置が変わります。3拍子と4拍子を切り替えて、同じテンポでも感じが変わることを確かめてください メトロノーム → 実際のリズムパターンで確かめる ロック・ボサノバ・サンバなどのパターンを鳴らして、キックとスネアがどの拍に置かれているかを見てください。拍子の強弱がそのまま出てきます リズムパターン辞典 →練習問題
答えは理論エンジンで検算しています。まず自分で解いてから採点してください。
- 1
拍子記号「3/4」の下の数字「4」は何を表していますか。
- 2
4分の4拍子で、もっとも強く感じられるのは何拍目ですか。
- 3
8分の6拍子は、ふつう何拍の拍子として感じられますか。
- 4
3/4 と 6/8 は1小節の長さが同じですが、決定的に違うのは何ですか。
- 5
小節の頭の強拍にあるはずのアクセントが、意図的にずらされているリズムを何と呼びますか。
到達確認
次に進む前に、上の項目を自分の言葉で説明できるか確かめてください。
出典・参考
- Time signature — Wikipedia — 単純拍子・複合拍子の分類と、6/8 が複合2拍子とされる根拠について