neirocca sound-first music theory

リズム聴音

約 14 分

この節のねらい

音高を切り離してリズムだけを書き取ります。拍を数えながら分割を判断する手順と、拍の頭が見えるように記譜する規則を扱います。

  • リズム聴音を「拍を数え、1拍の分割を判断する」手順で進められる
  • 音価の合計と拍子から自分の答えを検算できる
  • 付点・タイ・三連符の書き分けを説明できる
  • 拍の頭が見えるように記譜する理由を説明できる
この節の内容
  1. 拍を数えながら聴く
  2. 2分割と3分割の区別
  3. 音価の合計で検算する
  4. 拍の頭が見えるように書く
  5. 手順のまとめ

最後の軸はリズムです。旋律聴音のところで「音高とリズムを分けて処理する」と書きました。この節ではリズムだけを取り出して書き取ります。

音高が無いぶん楽に見えますが、実際にはリズム聴音のほうが苦手な人が多い。理由は基準を自分で作らなければならないからです。音高には主音という与えられた基準がありますが、リズムでは拍を自分で数え続ける必要があります。

拍を数えながら聴く

手順の中心はこれです。

聴きながら、頭の中で拍を数え続ける。

1・2・3・4、1・2・3・4。この数えが途切れると位置が分からなくなります。足でリズムを取る、指で数えるといった身体的な補助を使ってかまいません。むしろ推奨されます。

数えながら判断するのは1拍の中がどう分割されているかだけです。

1拍の中聴こえ方
分割なし拍の頭だけ鳴る
2分割拍の頭と真ん中
3分割(三連符)均等に3つ
4分割細かく4つ
前だけ長い付点のリズム
4 4 1拍1/21/4
図1: 1拍を分割していく。判断するのは「いくつに割れているか」だけ

7種類の音価を一度に判別しようとすると難しくなります。1拍単位に切って、その中の分割だけを見ると、選択肢は5つ程度に減ります。

1拍の分割を聴き分ける

確認: 4つとも同じテンポで、1拍の長さは変わりません。変わるのは1拍の中をいくつに割るかだけです。1つめは割らず、2つめは2つ、3つめは3つ、4つめは4つ。数えているのは常に同じ「1・2・3・4」で、その中に何個の音が入るかを聴き分けています。この感覚がリズム聴音の中心です。

1拍に1つ

2分割と3分割の区別

いちばん重要な分岐が2で割るか3で割るかです。U0 で扱った単純拍子と複合拍子の違いと同じ問題です。

2分割は「タ・タ」、3分割は「タ・タ・タ」。均等に3つ入るのが三連符です。

紛らわしいのが付点のリズムです。付点8分音符と16分音符の組み合わせは「タ——タ」となり、三連符の1つめと3つめだけを鳴らした形(「タ—・タ」)と似て聴こえます。

判断の手がかりは短いほうの音の位置です。付点なら短い音は拍の4分の3を過ぎたところ、三連符ベースなら3分の2のところにあります。慣れるまでは、三連符を頭の中で鳴らしながら聴くと位置を比べられます。

確認

4分の4拍子で、付点4分音符と8分音符が並んでいます。合計は何拍ですか。

音価の合計で検算する

リズム聴音には自己検算の方法があります。他の聴音には無い強みです。

書き取った音価を小節ごとに合計します。4分の4拍子なら4、4分の3拍子なら3、8分の6拍子なら8分音符6つぶん。合わなければどこかが間違っています

拍子1小節の合計(4分音符を1とする)
4/44
3/43
2/42
6/83(8分音符6つ)

合計が足りなければ休符を書き落としているか、音価を短く取りすぎています。多すぎれば逆です。どちらにずれたかで間違いの種類まで分かるので、聴き直すときの焦点が絞れます。

U0 で音価を扱ったときは記譜の規則として学びましたが、ここでは検算の道具として働きます。

確認

4分の4拍子の1小節を書き取ったところ、音価の合計が3.5拍になりました。まず疑うべきことはどれですか。

拍の頭が見えるように書く

聴き取れても、書き方を間違えると読めない譜面になります。原則は1つです。

拍の頭が譜面から見えるように書く。

4分の4拍子は「1・2」と「3・4」の2つのまとまりでできています。この境目、つまり小節の中央をまたぐ音符は、そこでいったん分割してタイで結びます。

4 4 12–3(読みにくい)4
図2: 2拍目から3拍目へまたぐ2分音符。音は正しいが、小節の中央がどこか読み取れない

図2は音の長さとしては正しいのですが、演奏者は3拍目がどこかを数え直さなければなりません。2つの4分音符に分けてタイで結べば、同じ長さのまま中央が見えます。

音の長さは変えず、読みやすさだけを変えるのがタイの役目です。シンコペーションを記譜するときは、ほぼ必ずこの処理が要ります。

手順のまとめ

  1. 拍子とテンポを掴む — 何拍子か、1拍がどれくらいの速さか
  2. 拍を数えながら通して聴く — 書かずに、拍だけを追う
  3. 小節線を先に引く — 枠を作ってから中身を入れる
  4. 1拍ずつ分割を判断する — いくつに割れているかだけを見る
  5. 合計で検算する — 各小節が拍子どおりの長さになるか
  6. 拍の頭が見えるように整える — 必要ならタイで分割する

旋律聴音・和声聴音と共通するのは、枠を先に作ってから中身を埋めるという順序です。3種類の聴音すべてで、頭から順に埋めるやり方より速く正確になります。

リズム耳トレでパターンを聴き分ける 複数のリズムパターンから聴こえたものを選ぶ形式です。まず拍を数えながら聴き、1拍の中がいくつに割れているかを判断してから選択肢を見てください リズム耳トレ →

これで11ユニットのカリキュラムが一巡しました。記譜から始めて、音程・音階・和音・機能・声部書法・非和声音・形式・半音階的和声・現代の語法を経て、最後にそれらを耳で捉え直すところまで来ました。

理論は聴くための道具です。ここまでに学んだ枠組みがあるからこそ、聴こえた音楽を「V から I へ行った」「そこに掛留音があった」という言葉で捉えられます。知っている構造しか聴き取れないという意味で、理論と聴音は同じことの表と裏です。

練習問題

答えは理論エンジンで検算しています。まず自分で解いてから採点してください。

  1. 1

    4分の4拍子で、付点2分音符は何拍分ですか。

  2. 2

    4分の4拍子で、付点4分音符は何拍分ですか。

  3. 3

    シンコペーションを聴き取ったとき、記譜で気をつけることはどれですか。

  4. 4

    4分の4拍子で、3拍目をまたぐ音符をタイで分割して書くのはなぜですか。

  5. 5

    4分の4拍子で、全音符は何拍分ですか。

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到達確認

次に進む前に、上の項目を自分の言葉で説明できるか確かめてください。