neirocca sound-first music theory

音価と休符

約 13 分

この節のねらい

音符の長さは絶対的な秒数ではなく、互いの比率で決まっています。2分割の原理、休符の対応、付点による1.5倍、そして3等分を可能にする連符までを、実際に鳴らして比率として体感します。

  • 全音符から16分音符までの長さの比率を説明できる
  • 音符と同じ長さの休符を対応づけられる
  • 付点が「元の長さの半分を足す」記号だと理解し、付点音符の拍数を計算できる
  • 音価が相対的な比率であり、実際の秒数はテンポで決まることを説明できる
この節の内容
  1. 音符の各部と2分割の原理
  2. 比率を耳で確かめる
  3. 休符は「鳴らさない長さ」
  4. 付点は「半分を足す」
  5. 3等分するには連符を使う
  6. 音価は相対的、テンポが実時間を決める

前の節で音の高さを扱いました。この節は残りの半分、長さです。

ここで最初に押さえておきたいのは、楽譜の音符は秒数を書いていないということです。4分音符は「0.5秒」ではありません。音符が表しているのは他の音符との比率だけで、実際の秒数はテンポによって後から決まります。

音符の各部と2分割の原理

音符は3つの部分からできています。符頭(たま)、符幹(ぼう)、符尾(はた)です。符頭が白いか黒いか、符幹があるか、符尾が何本あるかで長さが決まります。

全音符2分音符4分音符8分音符16分音符
図1: 音価の5段階。白い符頭 → 黒い符頭 → 符尾が1本 → 2本 と変化していく

長さの関係は単純です。ひとつ右に進むごとに半分になります。

音符4分音符を1としたときの長さ全音符いくつ分
全音符41
2分音符21/2
4分音符11/4
8分音符0.51/8
16分音符0.251/16

名前がそのまま比率になっているのがポイントです。「4分音符」は全音符を4等分したもの、「8分音符」は8等分したものです。英語では whole / half / quarter / eighth / sixteenth と、より露骨に分数で呼びます。

この体系の重要な性質は、2で割ることしかできないという点です。全音符を2、4、8、16… に分けるのは書けますが、3等分は音符の形だけでは書けません。この限界を突破するために、後で出てくる付点と連符という2つの仕組みが用意されています。

確認

8分音符は、2分音符の何分の1の長さですか?

比率を耳で確かめる

「半分」という関係は、数字で見るより鳴らしたほうが速く入ります。同じ音を、4分音符・8分音符・16分音符で並べて聴き比べてみてください。テンポは変えていません。

同じテンポで音価だけを変える

確認: テンポ(拍の速さ)はどれも同じです。変わっているのは1拍の中に音を何個入れるかだけ。4分音符が1拍に1個、8分音符が2個、16分音符が4個であることを確かめてください。

1拍に1個

休符は「鳴らさない長さ」

音符と同じ体系で、鳴らさない時間も書きます。それが休符です。長さの種類は音符と1対1で対応しています。

全休符2分休符4分休符8分休符16分休符
図2: 休符。全休符と2分休符は形が似ているので、五線上の位置で見分ける

実務で間違いやすいのは全休符と2分休符です。どちらも小さな長方形ですが、

  • 全休符は第4線からぶら下がる
  • 2分休符は第3線(中央線)の上に乗る

という違いがあります。形ではなく位置で判断します。

休符は「何も起きていない時間」ではなく、指定された長さだけ黙る指示です。演奏では、休符の長さを守ることが音を出すことと同じくらい効きます。

確認

4分の4拍子の1小節を、4分休符だけで埋めるには何個必要ですか?

付点は「半分を足す」

2分割だけでは 1.5 のような長さが作れません。そこで付点を使います。符頭の右に点を1つ打つと、元の長さの半分が足されます。

音符元の長さ付点で足す分合計
付点2分音符213
付点4分音符10.51.5
付点8分音符0.50.250.75
付点2分 = 3拍付点4分 = 1.5拍付点8分 = 0.75拍
図3: 付点音符。点の位置は符頭のすぐ右。符頭が線の上にある場合は、点をすぐ上の間に置く

点を2つ打つ複付点もあります。2つ目の点は「1つ目の点で足した長さのさらに半分」を足します。複付点2分音符なら 2 + 1 + 0.5 = 3.5 拍です。

ここに面白い性質があります。付点を無限に足していっても、合計は元の音符の2倍には決して届きません(2 + 1 + 0.5 + 0.25 + … が 4 に収束するのと同じ構造です)。だから付点は「次の音価に化ける」ことがなく、独立した長さとして安全に使えます。

付点があるとリズムがどう変わるか

確認: 1つめは均等な4分音符。2つめは「付点4分+8分」の組み合わせで、同じ2拍を 1.5 : 0.5 に分けています。長い–短いの揺れが生まれることを確かめてください。3つめは「付点8分+16分」で、同じ発想をさらに細かくしたものです。

1 : 1 : 1 : 1

3等分するには連符を使う

付点でも作れないのが3等分です。1拍を3つに均等に割りたいときは、連符(この場合は3連符)を使います。8分音符3つの上に「3」と書き、それが「本来2つ分の長さに3つ入る」ことを示します。

つまり3連符の1つは、通常の8分音符の 2/3 の長さです。この「2つ分の場所に3つ入れる」という発想が連符の本質で、5連符・7連符も同じ考え方で作られます。

2等分系と3等分系の違いは、リズムを語るうえで決定的です。次の節で扱う拍子も、この「2で割るか3で割るか」で分類されます。

確認

4分音符1つ分の長さに3連符を入れると、1つあたりの長さは通常の何音符の 2/3 になりますか?

音価は相対的、テンポが実時間を決める

冒頭に戻ります。ここまで出てきた数字はすべて比率で、秒数はひとつも出てきませんでした。

実際の長さはテンポが決めます。「♩= 60」なら4分音符1つが1秒、「♩= 120」なら0.5秒です。同じ楽譜でもテンポが2倍になれば、全部の音が半分の時間になります。

この分離は書式として非常に優れています。作曲側は音の比率だけを書けばよく、演奏側がテンポで解釈する余地が残ります。同じ曲の演奏がテンポによって別物に聞こえるのは、この設計のおかげです。

メトロノームで拍を体に入れる まず ♩=80 で4分音符を感じ、次に同じテンポで1拍を2つに割って(8分音符)声に出してみてください メトロノーム → 逆に、自分のテンポを測ってみる 好きな曲に合わせてタップすると BPM が出ます。「この曲は♩=いくつか」を知ると、音価の実時間が具体的になります タップテンポ →

次の節では、この拍をいくつかまとめて拍子を作ります。音価が「1つの音の長さ」だったのに対し、拍子は「長さの周期的なグループ」を扱います。

練習問題

答えは理論エンジンで検算しています。まず自分で解いてから採点してください。

  1. 1

    4分音符を1拍としたとき、付点4分音符は何拍分の長さですか。

  2. 2

    4分音符を1拍としたとき、付点2分音符は何拍分ですか。

  3. 3

    4分音符を1拍としたとき、複付点2分音符(付点が2つ)は何拍分ですか。

  4. 4

    4分音符を1拍としたとき、付点8分音符は何拍分ですか。

  5. 5

    全休符が五線に書かれる位置は、次のうちどれですか。

0 / 5

到達確認

次に進む前に、上の項目を自分の言葉で説明できるか確かめてください。

拍子と拍節