neirocca sound-first music theory

和声リズム(和音が変わる速さ)

約 14 分

この節のねらい

同じコード進行でも、和音が何拍で入れ替わるかによって曲の性格は大きく変わります。和音の変わる速さを和声リズムと呼び、拍節と終止の設計に直結します。

  • 和声リズムを「和音が変わる間隔」として定義できる
  • 和音の変わり目が強拍に置かれる理由を説明できる
  • 終止へ向けて和声リズムが加速する定型を、聴いて確かめられる
  • テンポと和声リズムが別のものであることを説明できる
この節の内容
  1. 和声リズムはテンポとは別の層
  2. 和音の変わり目は強拍に置く
  3. 終止へ向けて和声リズムは加速する
  4. 様式によって標準的な速さが違う
  5. 数えるときの注意 — バスが動いても和音が変わるとは限らない
  6. 自分で決めるときの手順

ここまで「どの和音を、どの順で置くか」を扱ってきました。この節で加えるのは時間です。

同じ C – F – G – C でも、1和音を4拍伸ばすのか、1拍ずつ切り替えるのかで、まったく違う音楽になります。和音が入れ替わる間隔和声リズム(harmonic rhythm)といいます。

和声リズムはテンポとは別の層

まず混同しやすい3つを分けておきます。

何を決めるか
テンポ1拍の長さ120 BPM
リズムパターン1拍の中の音符の分け方8分音符の刻み
和声リズム和音が変わる間隔1小節に1和音

この3つは独立して動かせます。テンポが速くても和声リズムが遅い曲(ゆったりした和音の上で細かい音が走る)もあれば、その逆もあります。

速い曲=和音がよく変わる、ではありません。ここを分けて聴けるようになるのがこの節の目標です。

同じ進行を違う和声リズムで聴く

確認: どちらも C – F – G – C の4和音で、テンポも同じ 96 BPM です。違うのは1和音が何拍続くかだけ。1つめは1和音4拍でゆったり、2つめは1和音1拍で慌ただしく聴こえます。和音の選び方を変えていないのに性格が変わることを確かめてください。

ゆったり。1小節に1和音

和音の変わり目は強拍に置く

和声リズムには基本の約束があります。和音が変わるのは強拍です。

ユニット0で拍節を扱ったとき、4分の4拍子には「強・弱・中強・弱」という重みの階層があることを見ました。和音の変わり目をこの重みに合わせると、拍節と和声が同じ方向を向いて安定します。

4 4 IIVVI
図1: バスの動きで和声リズムを示した例。1小節目は1和音、2小節目は2和音。どちらも和音の変わり目が小節の頭か3拍目にある

逆に、弱拍で和音を変えてそのまま強拍へまたがせると、拍節に逆らう効果が出ます。これはシンコペーションとして意図的に使われるもので、ポピュラー音楽では常套手段です。ただし古典和声の課題では、まず基本のほうを身につけます。

確認

4分の4拍子で和音を2つ置くとき、標準的にはどの拍で切り替えますか?

終止へ向けて和声リズムは加速する

古典的な楽曲でよく使われる設計があります。フレーズの終わりに近づくほど和音が速く変わるという形です。

たとえば8小節のフレーズなら、

  • 前半は1小節に1和音でゆったり進む
  • 終止が近づくと1小節に2和音になる
  • 終止の直前では1拍ごとに変わる
  • 最後の主和音だけが長く伸びる

こうすると、加速してから急に止まるという対比が生まれ、終止感が強まります。和声リズムが緊張を作り、終止形がそれを解決する、という役割分担です。

加速する版としない版

確認: どちらも同じ和音の並びを通りますが、1つめは全部が同じ長さで進みます。2つめは C が長く、F が半分、G が短く、そして最後の C で止まります。2つめのほうが「終わりに向かっている」と感じられるはずです。和音を1つも変えずに、時間配分だけで終止感を作れるという例です。

すべて2拍ずつ。平坦

様式によって標準的な速さが違う

和声リズムの「普通」は時代と様式で変わります。

様式よくある和声リズム
バロックの通奏低音1拍に1和音、またはそれより細かい
古典派のソナタ1小節に1〜2和音。終止で加速
ポップス・ロック1小節に1和音、または2小節に1和音
ゆるやかなバラード2小節に1和音のことも

ポップスの和声リズムが遅いのは、歌のメロディーに場所を空けるためです。和音が頻繁に変わると歌える音が次々に切り替わり、歌詞が乗せにくくなります。

逆にバロックの器楽曲では、細かく変わる和音そのものが推進力になります。どちらが良いという話ではなく、何を主役にするかで決まります

確認

ポップスで和声リズムが遅め(1小節1和音など)になりやすい理由として、もっとも適切なものはどれですか?

数えるときの注意 — バスが動いても和音が変わるとは限らない

和声リズムを聴き取るときに、いちばん引っかかりやすいのがここです。

低音が動いているからといって、和音が変わったとは限りません

たとえばバスが C – G – C – G と往復していても、上で鳴っているのが C の和音のままなら、和音は1つも変わっていません。これは1つの和音を分散して弾いているだけです。ギターやピアノの伴奏型ではごく普通に起こります。

同じことは転回形でも起きます。ユニット3で見たとおり、C – C/E – C/G はすべて C の和音です。バスは C – E – G と順次進行しますが、和声リズムとしては1和音が続いていると数えます。

バスは動くが和音は変わらない例

確認: 1つめはバスが C と G を往復しますが、鳴っている和音はずっと C です。2つめは実際に和音が C から G へ変わります。1つめでは「同じ場所に留まっている」感じ、2つめでは「移動した」感じがするはずです。動きの多さと和声リズムの速さは別物だと分かります。

上は C のまま。和声リズムは4拍に1和音

聴き取るときの判断基準は上の声部が変わったかどうかです。バスだけが動いていて上が同じなら、和音は続いています。

自分で決めるときの手順

作るときは、この順で考えると迷いません。

  1. 拍子とテンポを決める
  2. フレーズの長さを決める(4小節か8小節か)
  3. 和声リズムを決める(1小節に何和音か)
  4. その枠に機能の並び(T→SD→D→T)を当てはめる
  5. 最後に具体的な和音を選ぶ

順序が逆になって「和音を並べてから長さを考える」と、拍節と噛み合わない進行になりがちです。器を先に作り、中身を後から入れるのがコツです。

コード進行プレイヤーでテンポを変えてみる テンポを変えても和声リズム(1和音あたりの拍数)は変わりません。両者が別物だということを、実際にスライダーを動かして確かめてください コード進行プレイヤー → ビルダーで和音の長さを設計する 終止の直前だけ和音を短くすると、加速の効果が自分の進行でも作れます コード進行ビルダー →

次の節では、和音から和音へどう渡るかを扱います。ここまでは「どの和音を、いつ」でしたが、次は「どうつなぐか」です。

練習問題

答えは理論エンジンで検算しています。まず自分で解いてから採点してください。

  1. 1

    4分の4拍子で、1小節に和音が1つだけ置かれています。その和音は何拍続きますか。

  2. 2

    4分の4拍子の1小節を、付点2分音符と4分音符の2和音に分けました。前の和音は何拍続きますか。

  3. 3

    和声リズムとは何のことですか。

  4. 4

    古典的な楽曲では、フレーズの終止へ向かって和声リズムはどうなるのが定型ですか。

  5. 5

    8分の6拍子で、1つの和音が付点4分音符分だけ続きます。4分音符を1拍と数えると何拍ですか。

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到達確認

次に進む前に、上の項目を自分の言葉で説明できるか確かめてください。