五線と音部記号
約 14 分
この節のねらい
五線は音の高さを縦の位置に写した図です。線と間の数え方、ト音記号とヘ音記号が「どの音を指す記号なのか」、そして中央ハがふたつの譜表をつなぐ仕組みまでを、譜例を鳴らしながら確認します。
- 五線の「線」と「間」を下から数えて指定できる
- ト音記号・ヘ音記号がそれぞれどの音を指す記号なのかを説明できる
- ト音記号とヘ音記号で同じ音名が別の位置に来る理由を、中央ハを使って説明できる
- 加線を使って五線の外の音を読める
音楽理論の話は、ほとんどが「どの音か」と「どれだけの長さか」の2つに還元されます。この節では前者、つまり音の高さをどう書き表すかを扱います。
高さは本来、連続した量です。それを紙の上で扱えるようにするために、西洋音楽は「縦の位置」に置き換える方法を選びました。それが五線です。
線と間を数える
五線は5本の平行な線です。音符は線の上にも線と線のあいだ(間)にも置けるので、五線1つで 5 + 4 = 9 個の位置を表せます。
数え方は必ず下からです。下から1本目を「下第1線」、2本目を「第2線」、真ん中を「第3線」と呼びます。間も同じで、下第1線と第2線のあいだが「第1間」です。この「下から数える」約束は、以降のすべての説明の前提になります。
隣り合う位置(線から間、間から線)は、音名でちょうど1つぶん隣です。つまり五線の上で1段上がると、音名は C→D、D→E のように次の文字へ進みます。半音か全音かは、この図では区別されません。五線は「音名の並び」を写した図であって、実際の音の間隔を等間隔で表しているわけではないからです。この点は次の節以降で何度も戻ってくる重要な性質です。
確認
ト音記号の五線で、下から2本目の線(第2線)に書かれた音は?
音部記号は「基準音を指定する記号」
ここで問題が起きます。五線だけでは、下第1線がどの音なのかを決められません。同じ5本の線に、高い音域も低い音域も書けてしまいます。
そこで五線の左端に音部記号を置きます。音部記号の役割はひとつだけで、特定の線がどの音かを宣言することです。基準が1つ決まれば、残りの位置は自動的に決まります。
ト音記号(G clef)
ト音記号の渦が巻きついている線が G4 です。「ト音」は日本語音名でソ、つまり G を指します。記号の形はもともと文字の G が崩れたものです。
この1点が決まれば、あとは数えるだけです。第2線が G4 なら、第1間は F4、下第1線は E4。上に向かえば第2間 A4、第3線 B4 と続きます。
ヘ音記号(F clef)
ヘ音記号は2つの点にはさまれた線が F3 であることを宣言します。「ヘ音」はファ、つまり F です。こちらも文字の F が崩れた形です。
ヘ音記号の五線で線だけを下から数えると G2・B2・D3・F3・A3 になります。ト音記号の線が E・G・B・D・F だったのと比べると、同じ「線」なのに音名が違うことがはっきりします。音部記号が変われば、位置と音名の対応がまるごと入れ替わるということです。
確認
ヘ音記号の五線で、上から1本目の線(上第1線)の音は?
中央ハがふたつの譜表をつなぐ
ト音記号とヘ音記号は、無関係に決められているわけではありません。C4(中央ハ)という1つの音を境目にして、上下に並ぶように設計されています。
C4 は、ト音記号では五線の下に加線1本の位置に来ます。同じ C4 が、ヘ音記号では五線の上に加線1本の位置に来ます。
つまり2つの譜表を上下に並べると、あいだにちょうど C4 が1つ挟まる形になります。これが大譜表(ピアノ譜など)の成り立ちです。鍵盤で言えば、右手側がト音譜表、左手側がヘ音譜表、その境目が中央ハということになります。
同じ音が譜面上の2か所に書けるというのは、最初は混乱しやすいところです。実際に鳴らして「同じ音だ」と確かめてしまうのが早いです。
同じ音か確かめる
確認: 1つめはト音記号の加線に書いた C4、2つめはヘ音記号の加線に書いた C4 です。書かれる位置は違いますが、鳴る音は同じであることを確かめてください。3つめは1オクターブ上の C5 で、こちらは明らかに別の音です。
ト音譜表の下に加線1本
加線で五線の外に出る
五線の9個の位置では足りない音は、加線(ledger line)を足して書きます。加線は「もし五線が続いていたらそこに線があるはずの位置」に、必要な本数だけ短く引きます。
加線が3本を超えると読みにくくなるので、実際の楽譜では音部記号を変えるか、オクターブ記号(8va など)を使います。読譜の練習としては、まず加線1〜2本を即座に読めるようにするのが実用的な目標です。
確認
ト音記号で、五線の下に加線2本を引いた線の上に音符があります。その音は?
ハ音記号にも触れておく
音部記号はもう1種類あります。ハ音記号(C clef)は、記号の中心が指す線を C4 とする記号です。中心を第3線に置けばアルト記号(ヴィオラなど)、第4線に置けばテノール記号になります。
ハ音記号は「動かせる記号」だという点が面白いところです。ト音記号もヘ音記号も歴史的には動かせる記号でしたが、現在はほぼ固定位置で使われるため、位置が変わる記号としてはハ音記号だけが残っています。
初学のうちはト音記号とヘ音記号の2つを確実に読めれば十分です。ハ音記号は、ヴィオラやチェロ・トロンボーンの譜面を読む必要が出てきたときに戻ってくれば足ります。
鍵盤と結びつけて覚える
五線の位置を音名として覚えるだけでは、音の高さの実感が伴いません。鍵盤上の位置とセットにすると定着が早くなります。
鍵盤で C から順に音を鳴らす ハ長調の音階を鍵盤で確認できます。C→D→E と上がるのが、五線では「1段ずつ上がる」ことに対応しています スケール(音階)辞典 →読譜は、理屈を理解したあとは反復量で決まります。この節の内容を理解できたら、あとは短時間の反復を毎日のほうが、長時間まとめてやるより効きます。
練習問題
答えは理論エンジンで検算しています。まず自分で解いてから採点してください。
- 1
ト音記号の五線で、下から1本目の線(下第1線)に書かれた音は何ですか。
- 2
ト音記号の五線で、中央の線(第3線)に書かれた音は何ですか。
- 3
ヘ音記号の五線で、中央の線(第3線)に書かれた音は何ですか。
- 4
中央ハ(C4)は、ヘ音記号の五線に対してどの位置に来ますか。
- 5
ヘ音記号の五線で、下から1本目の線(下第1線)に書かれた音は何ですか。
到達確認
次に進む前に、上の項目を自分の言葉で説明できるか確かめてください。
出典・参考
- Clef — Wikipedia — 音部記号が「基準音を指定する記号」であるという定義と、各記号の基準線について