三和音の4種
約 14 分
この節のねらい
三和音は3度を2つ積んだ和音です。積む3度が長か短かの組み合わせで4種類しかできず、その4種類で長・短・減・増のすべてが説明されます。音階から1つ飛ばしで取り出すだけで和音が得られる仕組みも確認します。
- 三和音が根音・第3音・第5音からなることを説明できる
- 3度の積み方(長短の順序)から4種類の三和音を導ける
- 音階から1つ飛ばしで音を取ると三和音になることを説明できる
- 減三和音と増三和音が不安定な理由を第5音の音程から説明できる
ここから和音を扱います。和音は複数の音を同時に鳴らしたものですが、西洋和声では3度を積み重ねるという明確な原理で作られます。
もっとも基本的な和音は3つの音からなる三和音(triad)です。
3度を2つ積む
三和音は、根音の上に3度を2つ積んで作ります。3つの音にはそれぞれ名前があります。
| 音 | 位置 | 根音からの音程 |
|---|---|---|
| 根音(root) | 一番下 | — |
| 第3音(third) | 3度上 | 長3度 または 短3度 |
| 第5音(fifth) | さらに3度上 | 完全5度・減5度・増5度 |
「3度を2つ積む」という制約が効いています。3度には長3度と短3度の2種類があるので、積み方の組み合わせは 2 × 2 = 4通りしかありません。この4通りが、そのまま4種類の三和音になります。
4種類しかない
| 種類 | 下の3度 | 上の3度 | 根音〜第5音 | 記号 |
|---|---|---|---|---|
| 長三和音(メジャー) | 長 | 短 | 完全5度 | C |
| 短三和音(マイナー) | 短 | 長 | 完全5度 | Cm |
| 減三和音(ディミニッシュ) | 短 | 短 | 減5度 | Cdim |
| 増三和音(オーギュメント) | 長 | 長 | 増5度 | Caug |
ここで注目すべきは第5音です。長三和音と短三和音は、どちらも根音から完全5度です。前のユニットで確認したとおり完全5度は完全協和音程なので、この2つは骨格が安定しています。
一方、減三和音は減5度、増三和音は増5度で、どちらも不協和音程です。だからこの2つは単独では落ち着かず、必ず次へ動きたがります。
4種類を聴き比べる
確認: 根音はすべて C です。1つめ(長)と2つめ(短)は骨格が完全5度なので安定して聞こえます。3つめ(減)と4つめ(増)は第5音が変化しているため、宙ぶらりんで「次に行きたい」響きになることを確かめてください。
長3度+短3度 / 完全5度
確認
長三和音と短三和音の違いは、どの音の高さですか?
五線の上での見え方
三和音は、五線に書くと特徴的な形になります。この形を覚えておくと、楽譜を見た瞬間に「これは三和音だ」と判断できます。
3度は「音階を1つ飛ばす」ことなので、五線の上ではちょうど1段分の移動になります。線から次の線へ、あるいは間から次の間へ。3度を2つ積むということは、その1段分の移動を2回するということです。
したがって基本形の三和音は、必ず次のどちらかになります。
- 3つとも線の上に乗る(E–G–B のように)
- 3つとも間に入る(F–A–C のように)
3つの音がすきまなく団子状に積まれていたら基本形です。逆に、どこかに1音ぶんの空きがあれば、それは音の順番を入れ替えた形(次の節で扱う転回形)だと分かります。
この「見た目で分かる」という性質は、和音を素早く読むための実用的な手がかりになります。音名を1つずつ読んで音程を計算する必要はありません。
確認
五線の上に、3つの音が等間隔にすきまなく積まれています。この和音について確実に言えることは何ですか?
音階から1つ飛ばしで取る
三和音を作るのに、いちいち3度を数える必要はありません。音階を1つ飛ばしに取るだけで自動的に3度が2つ積まれます。
ハ長調の音階 C D E F G A B から、C・E・G を取る。D・F・A を取る。E・G・B を取る。この操作を7つの音度すべてで行うと、7つの三和音が得られます。
ここで面白いことが起きます。同じ操作をしているのに、できる和音の種類が違うのです。
- C・F・G → 長三和音
- Dm・Em・Am → 短三和音
- Bdim → 減三和音
理由は、音階の中に半音が2か所あることです。1つ飛ばしで取った3度が、半音を含む位置では短3度、含まない位置では長3度になります。音階の半音の配置が、和音の種類の配列を決めているわけです。
これが次のユニットで扱うダイアトニックコードの正体です。長調ならどの調でも「長・短・短・長・長・短・減」という同じ配列になります。
音階を積むだけで7つの和音ができる
確認: ハ長調の音を1つ飛ばしで取っただけの7つの和音です。長・短・短・長・長・短・減 という並びを耳で追ってください。最後の Bdim だけが明確に不安定で、次(C)に行きたくなることも確かめてください。
長 短 短 長 長 短 減
確認
ハ長調で D の上に立つ三和音は何ですか?
増三和音はどこから来るか
図4に増三和音がないことに気づいたかもしれません。長音階のダイアトニック三和音に増三和音は現れません。
増三和音が自然に出てくるのは和声的短音階です。前のユニットで第7音を半音上げたので、第3音の上に立つ和音が変化します。
ハ短調(和声的)の第3音 E♭ の上に E♭・G・B を積むと、E♭–G が長3度、G–B も長3度なので増三和音になります(自然的短音階なら B♭ で長三和音でした)。
つまり増三和音は導音を上げた副作用として生まれる和音です。使用頻度は他の3種類より大幅に低く、独立した機能を持つよりも通過的に使われます。
確認
増三和音がダイアトニックに現れるのは、どの音階の第何音の上ですか?
和音記号の読み方
図で使った C / Cm / Cdim / Caug という表記がコードネームです。規則は単純で、
- 大文字の音名=根音
- 後ろの記号=種類(何も付かなければ長三和音)
長三和音に記号が付かないのは、それが基準として扱われているからです。ポピュラー音楽では m / dim / aug、クラシックの文脈では別の記法(ローマ数字)が使われます。この2つの記法の対応は、このユニットの最後の節で正面から扱います。
コード検索で4種類を切り替える root を C に固定して major / minor / dim / aug を切り替えると、鍵盤上でどの音が動くかが見えます。第3音と第5音だけが動くことを確かめてください コード検索 → ダイアトニックコードを先に見ておく ハ長調の7つの和音が並びます。長・短・短・長・長・短・減 の配列を、キーを変えても保たれることも確かめてください ダイアトニックコード早見 →練習問題
答えは理論エンジンで検算しています。まず自分で解いてから採点してください。
- 1
C メジャー三和音の構成音を、下から3音並べてください。半角スペース区切りで答えてください。
- 2
A マイナー三和音の構成音を、下から3音並べてください。半角スペース区切りで答えてください。
- 3
B ディミニッシュ(減三和音)の構成音を、下から3音並べてください。半角スペース区切りで答えてください。
- 4
減三和音の根音から第5音までの音程は何ですか。
- 5
音階から三和音を取り出すには、どうすればよいですか。
到達確認
次に進む前に、上の項目を自分の言葉で説明できるか確かめてください。