聴音とソルフェージュ · 節 3
旋律聴音
約 15 分
この節のねらい
聴こえた旋律を書き取る手順です。頭から1音ずつ埋めるのではなく、骨組みを先に押さえて隙間を埋める。跳躍を和音に結び付ける考え方も扱います。
- 旋律聴音を「骨組みを先に取り、あとから隙間を埋める」手順で進められる
- 音高とリズムを分けて聴き取る理由を説明できる
- 跳躍を和音の構成音と結び付けて聴き取れる
- 練習で調を毎回変える理由を説明できる
ここからは書き取りです。聴こえた旋律を、音の並びとして再構成します。
多くの人が最初にやるのは「頭から1音ずつ書く」やり方ですが、これはいちばん失敗しやすい方法です。理由を先に押さえておきます。
頭から順に埋めない
頭から順に書くと、途中で1音つまずいた時点で止まります。その先が全部書けなくなり、聴き直す回数だけが増えていきます。
代わりに骨組みを先に置きます。
- 調と拍子を確認する — 主音がどこかを知らないと音度が測れない
- 全体を通して聴く — 書かずに輪郭だけ掴む。上がるのか下がるのか、山はどこか
- 目印を置く — 最初の音、最後の音、いちばん高い音、各小節の頭
- 隙間を埋める — 目印のあいだを順次進行か跳躍かで判断しながら
- 通して検算する — 書いたものを頭の中で鳴らして、聴いたものと合うか
この順序なら、途中が1箇所分からなくても他は書けます。全体の輪郭を先に確保するのが要点です。
音高とリズムを分ける
もう1つの原則があります。音高とリズムを同時に処理しない。
人間が一度に注意を向けられる対象には限りがあります。「次の音は何か」と「その音は何拍伸びるか」を同時に考えると、どちらも精度が落ちます。
1回目は音高だけ、2回目はリズムだけ、と分けて聴くほうが速く正確です。慣れてくると同時にできるようになりますが、練習の段階では意識的に分けるのが有効です。
同じ音高、違うリズム
確認: 3つとも音の並びは C D E F G でまったく同じです。変えているのはリズムだけ。音高だけを追うと3つは区別できず、リズムだけを追うと明確に違います。この2つが独立した情報であることを確かめてください。聴音では別々に処理したほうが速くなります。
すべて同じ長さ
音度で聴く
旋律を書き取るとき、頭の中で数えるのは音名ではなく音度です。ユニット2で扱った「音階の中で何番目か」という捉え方をそのまま耳に使います(音程の大きさを表す「度数」とは別のものなので、混ぜないでください)。
ハ長調で E が鳴ったとき「E だ」ではなく「主音から3つ上だ」と捉える。こうしておけば、同じ旋律がト長調で鳴っても同じ「3」として聴き取れます。あとで音名に直すのは書くときだけです。
図1の旋律をト長調に移すと G B D B G になりますが、音度は 1-3-5-3-1 のままです。音度は移調で不変で、これが相対的な聴き方の実体です。
確認
ハ長調で 1-3-5 という音度の旋律を、ヘ長調に置き換えるとどの音になりますか。
跳躍は和音に結び付ける
順次進行は追いやすいですが、跳躍は難しい。ここで U6 の内容が効きます。
旋律の骨組みは和音構成音でできていて、非和声音は順次進行でつながれる。これを裏返すと、跳躍したときの着地点は和音構成音である可能性が高いということになります。7つの候補が3つか4つに減ります。
聴音で「今、跳んだ」と感じたら、まずその時点で鳴っている和音の構成音を候補にする。それで当たらなければ非和声音を疑う、という順序です。
骨組みだけと、隙間を埋めたもの
確認: 1つめは和音構成音だけの骨組みで、跳躍が続きます。2つめは同じ骨組みのあいだに順次進行の音を挟んだものです。同じ輪郭を持っていることを確かめてください。聴音では最初に1つめのような骨組みを掴み、そのあとで隙間の音を埋めます。逆順でやると輪郭を見失います。
和音構成音のみ
短調では第7音に注意する
短調の旋律聴音には固有の落とし穴があります。第6音と第7音が固定されていないことです。
U2 で扱ったとおり、短調には3種類の音階があります。旋律の中で第7音が半音上がっていれば和声的(または旋律的)短音階、上がっていなければ自然的短音階です。
イ短調なら、聴こえたのが G か G# かで判断します。A から G# は長7度、A から G は短7度。この半音1つの差を聴き分けることが、短調の旋律聴音の要点です。
判断の手がかりは次にどこへ行くかです。G# なら主音の A へ半音で上がりたがります。G なら上がらずに下がることが多い。動き方から逆算できます。
確認
イ短調の旋律を聴いていて、第7音のあとすぐに主音へ半音で上がりました。この第7音はどちらですか。
練習は調を変える
最後に練習の設計です。前の節と同じ原則が効きます。
毎回違う調から出題する。同じ調ばかりで練習すると、音度ではなく実際の音の高さを覚えてしまいます。それでは別の調で出題された瞬間に答えられません。調が毎回変われば頼れるのは主音からの距離だけになるので、相対的な聴き方が強制的に鍛えられます。
そのために答える前に主音を鳴らす習慣を付けてください。基準が無いまま距離を測ることはできません。演奏会でも試験でも、聴音の前には必ず主和音か音階が示されます。
聴音トレーナーで旋律を書き取る 調は毎回ランダムに変わります。まず「主音」を押して基準を耳に入れ、それから課題を再生してください。入門レベルは順次進行だけです 聴音トレーナー →旋律聴音は1本の線を追う訓練でした。次の節では線が4本になります。和声聴音です。
練習問題
答えは理論エンジンで検算しています。まず自分で解いてから採点してください。
- 1
イ短調(和声的短音階)の主音 A から導音までは何度ですか。
- 2
ハ長調の第3音と第5音のあいだは何度ですか。
- 3
旋律の跳躍を聴き取るとき、下の和音の構成音が手がかりになるのはなぜですか。
- 4
旋律聴音で、頭から1音ずつ順に書いていくやり方が失敗しやすいのはなぜですか。
- 5
旋律聴音の練習で、毎回違う調から出題するのが望ましいのはなぜですか。
到達確認
次に進む前に、上の項目を自分の言葉で説明できるか確かめてください。