暗く陰のある和の音階|都節音階とは(三味線・箏の響き)
暗く陰のある、しっとりした和の響きを出したい人へ。半音を2つ含む5音「都節音階(ド・♭レ・ファ・ソ・♭ラ)」の仕組みと使い方を、音を鳴らしながら解説します。
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都節音階とは?
三味線の弾き語りや箏(こと)の音色に漂う、あの暗くしっとりとした和の響き。時代劇のしんみりした場面で流れる「いかにも日本」という陰のあるメロディー。その多くは**都節音階(みやこぶしおんかい)**でできています。ドを基準にすると、ド・♭レ・ファ・ソ・♭ラの5音だけの音階です(度数では 1・♭2・4・5・♭6)。
まず聴いてみる
理屈より先に、同じメロディーが都節音階で「陰のある和」に変わる瞬間を耳で確かめると早いです。上の試聴ボタンで、まず普通のドレミ(メジャー)を聴き、次に都節音階を聴いてください。続けて「きらきら星」を都節音階で鳴らすと、明るいはずの童謡が一気に三味線で爪弾くようなしっとりした響きに変わるのがわかります。
スケール辞典でも確認できます。
- スケール辞典を開く
- ルートを C、スケールを「都節音階」にする
- 鍵盤をなぞる。ド–♭レ と ソ–♭ラ の2か所が半音でくっつく
- 同じルートでメジャー(7音)に戻し、明るさと陰の違いを聴く
どんな音階か(仕組み)
都節音階の特徴は、半音でぴったりくっつく箇所が2か所あることです。ド–♭レ と ソ–♭ラ。この短2度の半音が、音階全体に独特の暗さ・緊張・陰りを与えます。明るいメジャースケールが全音中心で開けて聞こえるのとは対照的に、都節音階は半音が前に出るぶん、内向きで思索的な響きになります。
- 構成音: ド・♭レ・ファ・ソ・♭ラ(5音)
- 度数: 1・♭2・4・5・♭6
- 半音のぶつかり: ド–♭レ(1–♭2)と ソ–♭ラ(5–♭6)の2か所
- 分類: 「陰(いん)音階」の代表格(暗く沈んだ性格の5音音階)
都節音階は、日本の伝統音楽でいう陰(いん)音階の一種です。沈んだ暗い性格を持つ陰に対し、明るく開けた響きを持つのが陽(よう)音階で、両者は対になって語られます。
三つの「日本の音階」を聴き比べる
「日本の音階」とひとくくりにされがちですが、有名な5音音階を並べると、性格はまったく違います。どの音を抜く/残すかで、明るさも地域性も変わります。
- ヨナ抜き音階(本土・懐かしい)→ ファとシを抜く → ド・レ・ミ・ソ・ラ → 童謡やJ-POPの素朴な懐かしさ
- 琉球音階(沖縄)→ レとラを抜く → ド・ミ・ファ・ソ・シ → 三線の張りのある明るさ
- 都節音階(陰・暗い)→ ド・♭レ・ファ・ソ・♭ラ → 半音を2つ含む、しっとりした陰の響き
ヨナ抜きは半音を「消す」ので素朴に、琉球音階は半音を「残す」ので張りつめて聞こえます。それに対し都節音階は、半音を2つ抱えこむことで「陰」の暗さを生みます。そしてこの都節音階の暗い陰に対し、明るく開けた陽の側が陽音階です。同じルートで4つを鳴らし比べると、「日本の音階」が一枚岩ではないことが体感できます。
雅楽とは別の系統である(よくある誤解)
ここで正確に押さえておきたい点があります。都節音階は、雅楽(ががく)とは別の系統の音階です。雅楽は宮廷の古い音楽で、律(りつ)・呂(りょ)といった独自の旋法を使います。一方、都節音階は江戸期に発達した三味線音楽や箏曲(そうきょく)の世界で育った音階で、両者の出自はまったく異なります。
英語版ウィキペディアの「In scale」の項目でも、この陰(in)音階=都節音階は箏(koto)と三味線(shamisen)の音楽に使われる一方で、雅楽(gagaku)は除外されると明記されています(参考: In scale - Wikipedia)。「雅楽の音階」とまとめて語られることがありますが、これは誤りです。
どんな曲で使われているか
都節音階は、江戸期に花開いた近世邦楽——すなわち三味線音楽(地歌・長唄など)、箏曲(そうきょく)、尺八(しゃくはち)——を支える中心的な音階です。長唄の名曲「石橋(しゃっきょう)」のような曲でもこの音階が用いられ、しっとりとした陰の表情をつくっています(参考: 国立劇場 文化デジタルライブラリー「都節音階」)。現代でも、時代劇や和風ゲーム、和テイストのBGMで「いかにも日本の、暗くしっとりした場面」を作りたいときに使われます。
作る人向け:陰のある和の雰囲気を出す
オリジナル曲を「暗くしっとりした和風にしたい」とき、都節音階は強力な近道です。
- メロディーをド・♭レ・ファ・ソ・♭ラの5音に絞るだけで、自然と陰のある和の響きになります
- ド→♭レ、ソ→♭ラ という半音の動きを前に出すと、三味線で爪弾くような独特の節回しが出ます
- 行き詰まったら、知っているメロディーを都節音階に「変換」して骨格を学ぶのが近道です
聴く人向け:陰の和を聴き分ける
「暗くしっとりした和」と感じたとき、その正体はたいてい残されている半音にあります。ヨナ抜きが半音を避けて素朴になるのとは逆に、都節音階では半音(ド–♭レ、ソ–♭ラ)が表に出てきます。とくに「♭レ」や「♭ラ」へすべり込む半音の動きに耳を向けると、都節音階を使った曲を自分で見つけられるようになります。
次に試すこと
時代劇や和風ゲームのBGMを思い出し、しっとり暗い和のメロディーで「半音ですべり込む動き」が出てくるかを意識して聴いてみてください。出てくれば、都節音階の可能性が高いです。次に、スケール辞典で都節音階・琉球音階・ヨナ抜きを同じルートで鳴らし、同じ「日本の音階」でも明るさと陰がこれほど違うことを聴き比べましょう。音階は「どの半音を残すか」で性格が決まる、という感覚がつかめます。
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