エキゾチック・中東っぽい響きの音階|アラビア音階(ダブルハーモニック)とは
中東っぽい・エキゾチックなメロディーを作りたい人へ。映画やゲーム音楽でおなじみのアラビア音階(ダブルハーモニック)の仕組みと、あの独特の跳躍が生まれる理由を、音を鳴らしながら解説します。
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アラビア音階とは?
映画の砂漠のシーン、ゲームのバザール、エキゾチックなBGM。あの「中東っぽい」響きの正体の多くは、アラビア音階と呼ばれる音階です。理論的にはダブルハーモニック(二重和声)音階と同じもので、ドを起点にするとド・レ♭・ミ・ファ・ソ・ラ♭・シの7音(度数では 1・♭2・3・4・5・♭6・7)でできています。普通のメジャースケールの2番目と6番目を半音下げた形、と考えると見通しが良くなります。
まず聴いてみる
理屈より先に、普通のメジャーとの差を耳で確かめると早いです。上の試聴ボタンで、まずいつものドレミ(メジャー)を聴き、次にアラビア音階を聴いてください。2番目と6番目が半音下がるだけで、急に異国的な空気に変わるのがわかります。続けて「きらきら星」をアラビア音階で鳴らすと、知っているはずのメロディーが砂漠の風景のように響き、この音階の力がはっきり体感できます。
スケール辞典でも確認できます。
- スケール辞典を開く
- ルートを C、スケールを「ダブルハーモニック」にする
- 鍵盤をなぞる。レ♭→ミ、ラ♭→シ の2か所に、隣の鍵盤を飛び越える大きな跳躍があるのがわかる
- 同じルートでメジャーに戻し、その跳躍が消える違いを聴く
どんな音階か(仕組み)
この音階の個性は、**2つの増2度(オーグメンテッド・セカンド)**にあります。増2度とは、見た目は「2度(隣の音名)」なのに、実際の幅は半音3つぶん=短3度と同じという、不釣り合いに大きな跳躍です。
アラビア音階では、
- レ♭ → ミ(♭2 から 3)
- ラ♭ → シ(♭6 から 7)
の2か所にこの増2度が現れます。「ダブルハーモニック(二重和声)」という名前は、この増2度を含む和声的なまとまりが2つあることに由来します(参考: Double harmonic scale - Wikipedia)。普段のドレミに慣れた耳には、この大きすぎる跳躍が「ここでは聴き慣れない動き」として届き、それがそのまま異国的・エキゾチックな色になります。
- 半音下げる音: 2番目(レ→レ♭)と6番目(ラ→ラ♭)
- 跳躍が生まれる場所: レ♭→ミ と ラ♭→シ(どちらも増2度)
- 構造: 半・増2度・半・全・半・増2度・半
「アラビア音階」という名前のわかりにくさ
ここで多くの人がつまずきます。同じ音階が、本やサイトによってまるで違う名前で呼ばれているからです。ダブルハーモニックメジャー、ビザンチン音階、ジプシーメジャー、ヒジャーズ・カール、Ionian ♭2 ♭6 ── これらは呼び名こそ違え、音の並びは同じです(参考: Double harmonic scale - Wikipedia)。さらにインド古典音楽のラーガ「バイラヴ」も同じ並びを持ちます。
なぜこんなに名前が多いのか。それは、増2度を2つ持つこの印象的な響きが、地中海・中東・南アジアと広い地域で別々に育ってきたからです。名前が違っても音は同じ、と知っておくと、教材ごとの表記ゆれに振り回されずに済みます。当サイトのスケール辞典では、理論用語として中立な 「ダブルハーモニック」 で扱っています。
本物の「マカーム」とは違う、という大事な前提
ここが一番大切な、そして誤解されやすい点です。鍵盤で弾けるこの「アラビア音階」は、本物のアラビア音楽そのものではありません。
実際のアラビア音楽はマカームという旋法体系の上に成り立っていて、その多くは四分音(クォータートーン)── 半音をさらに半分に割った、ピアノの鍵盤の間に存在する音 ── を使います(参考: Arabic maqam - Wikipedia)。ピアノやギターのような12音平均律の楽器では、この微妙な音程は再現できません。ウードやヴァイオリンのようなフレットのない楽器、ナーイやカーヌーンのような微分音を扱える楽器でしか、本来の響きは出せないのです。
つまりこの12音の「アラビア音階」は、マカームの響きを12音で近似し、雰囲気を呼び起こすための西洋的な道具です。本物の代わりではなく、「あの空気感を借りる」ための音階だと理解しておくのが、正確で、その音楽への敬意でもあります。
どんな曲で使われているか
増2度の効いたこの響きは、映画・ゲーム・ポップスで「エキゾチックな場面」を一瞬で立ち上げる手段として広く使われてきました。砂漠やオアシス、市場、古代の遺跡といった情景を描く劇伴で耳にすることが多く、メタルやサーフロックでも「中東っぽさ」を狙うときに登場します。「なんとなくアラビアンな雰囲気」を感じたら、メロディーの中に増2度の大きな跳躍が隠れていないか探してみると、この音階が見つかることが多いです。
作る人向け:エキゾチックさを最短で出す
オリジナル曲に「異国情緒」「中東っぽさ」を足したいとき、アラビア音階は最短ルートのひとつです。
- いつものメジャースケールから、2番目と6番目を半音下げるだけで雰囲気が一変します
- メロディーで レ♭→ミ、ラ♭→シ の跳躍を意図的に通すと、エキゾチックさが最も濃く出ます
- 全編で使うと濃すぎることもあるので、サビや特定の場面だけアラビア音階にする「効かせどころ」を作ると効果的です
聴く人向け:エキゾチックさの正体を聴き分ける
「異国っぽい」と感じたとき、その正体はたいてい増2度の大きな跳躍にあります。隣り合う音名なのに、半音3つぶんも離れている ── この不釣り合いな間隔が耳に引っかかり、聴き慣れない=異国的だと感じさせます。レ♭→ミ や ラ♭→シ のような「2度なのに大きく飛ぶ」動きに耳を向けると、アラビア音階を使った曲を自分で見つけられるようになります。
次に試すこと
スケール辞典で同じルートのまま、メジャー → ダブルハーモニックと切り替えて鳴らし、2番目と6番目を半音下げるだけで景色が変わる瞬間を聴いてください。次に「きらきら星」をアラビア音階で鳴らし、知っているメロディーがどれだけ別物になるかを確かめましょう。そのうえで、これは本物のマカームではなく雰囲気の近似だという前提を思い出すと、「異国を借りる音階」としての使いどころが見えてきます。
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